No.022 - そうだ人文機構、行こう - 外来研究員アンドルー・ハウエンさんの場合

そうだ人文機構、行こう - 外来研究員アンドルー・ハウエンさんの場合

人間文化研究機構(人文機構)では、2007年に英国の助成機関である、芸術・人文リサーチ・カウンシル(AHRC)と覚書を締結し、日本研究を志す英国の大学院生や若手研究者を本機構の研究機関で受入れて、研究指導を行っています。今回は、2013年に国文学研究資料館(国文研)で受け入れた、アンドリュー・ハウエンさんに、ご自身の研究活動についてお話を伺いました。現在ハウエンさんは、日本学術振興会(JSPS)の外国人特別研究員として東京女子大学で研究活動に取り組んでいます。
 

現在の研究課題や取り組んでいるプロジェクトはどのようなものですか?

私の研究分野は比較文学、具体的には英語と日本の詩の比較研究です。現在は、JSPSの助成を受けて米国の作詩家エズラ・パウンド(Ezra Pound)と日本の関係をまとめた図書の出版プロジェクトに取り組んでいます。パウンドは、20世紀の最も著名な英語圏の詩人の一人であり、彼が日本文学に与えた、そして日本文学から受けた影響について研究しています。
 

5年後、そして10年後、あなたは何をしていると思いますか?

5年後、日本の大学で准教授として教壇にたっていられたら、と思います。また、それまでにさきほどの出版プロジェクトで図書を出版し、この分野の学術論文をいくつか執筆しできたらと思います。そして今後の10年間で、日本で、もし難しいならどこかよその国で、常勤の研究職をみつけたいです。
 

国文研で研究を開始する最初の日に、知っておきたかったことは何ですか?

国文研のスタッフはとても親しみやすく、親身になって受け入れてくれました。研究面でも、研究所では何の不具合もありませんでした。
 

外来研究員として日本に滞在し、最も記憶に残った出来事は何でしたか?

最も記憶に残っているのは、副所長の谷川先生、研究員の根岸先生が、日本の近代詩の著名な評論家、和田先生と一緒に、私に神田の古本屋街を紹介してくださり、詩の本を探してくださったことです。私自身の専門分野でリーダ的存在の研究者と接点を持ったことは、私の研究にとって多くの有益な「つながり」をもたらしてくれました。そしてそのことは、たとえば英詩と日本現代詩といった異なる研究分野間の対話という、実にすばらしい機会を提供してくれます。


外国で研究しようとしている学生や若手研究者にアドバイスをお願いします。

みなさんへの私からのアドバイスは、外国にいる間にできるだけ多くのコネクションを作ることです。あなた自身の研究分野にかかわる見識を広げることができますし、あなたの研究活動に実に有益なものになると思います。
 

アンドルー・ハウエン博士
 現在、東京女子大学のJSPS外国人特別研究員として来日中。英国で育ち、オックスフォード大学で修士号、レディング大学で博士号を取得。現在、エズラ・パウンドと日本文学との関係に焦点を当てた研究プロジェクトに取り組んでいる。このプロジェクトは、The Review of English Studies - Volume 65(2013年、オックスフォード大学出版)に掲載されたハウエンさんの論文「Ezra Pound’s Early Cantos and his Translation of Takasago(エズラ・パウンドの早期詩編群と『高砂』の翻訳」(2014年のエズラ・パウンド協会賞受賞)に基づいて構想されたものである。他に、バジル・バンティングによる鴨長明の『方丈記』の翻訳に関する査読論文やThe New Ezra Pound(ケンブリッジ大学出版)の中の「エズラ・パウンドと日本文学」の章を分担執筆している。
 余暇には、読書、街中探索、美術館・博物館見学、山間のハイキングを楽しんでいる。