vol.039 - そうだ人文機構、行こう - 外来研究員クラウディア・デッラカーサさんの場合

そうだ人文機構、行こう - 外来研究員クラウディア・デッラカーサさんの場合

人間文化研究機構(人文機構)では、2007年に英国の助成機関である、芸術・人文リサーチ・カウンシル(AHRC)と覚書を締結し、日本研究を志す英国の大学院生や若手研究者を本機構の研究機関で受入れて、研究指導を行っています。今回は、2018年度に京都の国際日本文化研究センター(日文研)で受け入れたクラウディア・デッラカーサさんに、ご自身の研究活動や外来研究員としてのご経験についてお話を伺いました。クラウディアさんは現在、英国のダラム大学の博士課程に在籍しています。

 

現在の研究課題や取り組んでいるプロジェクトはどのようなものですか?
私は、今イタリアの現代文学を、国境を超えた見地から分析しています。今日、文化的なつながりの重要性が増す中、そのような関係がイタリア人作家、イタロ・カルヴィーノに与えた影響について明らかにしようとしています。イタロ・カルヴィーノは、20世紀のイタリア人作家の中でも著名な作家のうちの一人です。

特に、1976年の日本訪問、日本文学と思想への興味、そしてカルヴィーノの後年の作品における日本文化についての詳述を研究しています。 カルヴィーノの日本との接触は、実り豊かでありながらもこれまでほとんど探求されてきませんでした。ポスト・ウエスタン、ポスト・ヒューマンなカルヴィーノの論説について非常に興味深い事柄がわかってきました。

私は、修士課程まで言語学を学んでいました。ですから、現代のグローバルな文脈におけるイタリア文学の位置づけに照らして、テキストに書かれていることばの変遷を扱う文献学的なアプローチを用いて、より広い文脈でカルヴィーノのことばを理解しようと試みています。

 

この研究分野に関心を持ったきっかけは何ですか?
ローマにあるカルヴィーノの図書館に所蔵されている本の目録を作成したことがきっかけです。この折に、日本の文学と宗教に関する書籍をいくつか発見するという貴重な経験をしました。目録の作成は、修士論文でカルヴィーノの小説“Il barone rampante” (『 木のぼり男爵 』)の言語構造を扱ったことに関係していました。カルヴィーノが執筆した散文に影響を与えたかもしれない18世紀の書物を特定するために目録を作ったのです。

博士課程の研究テーマは、長年勉強してきた大好きなイタリアの作家と、私がその魅力にますます惹きつけられて熱心に探求している文化、日本文化とを結び付けるものです。

 

5年後、そして10年後、あなたは何をしていると思いますか?
私は人生の今この時を謳歌しています。英国のダラム、日本の京都という素晴らしい場所で自分が一番好きな研究に取り組んでいます。ですから、博士号を取得した後に取り組む学術的であれ、個人的であれ、どんな研究であっても同じ情熱を持ち続けていたいと思います。

実は、「無常」(常住でないこと)という考え方に魅了されているんです。ですから、未来というよりは、できるだけ今に注力したいという考えです。とはいえ、将来についてはもの凄く楽観的なんですけどね。

 

外来研究員として日本に滞在し、最も記憶に残った出来事は何でしたか?
たくさんの素晴らしい思い出があります。高野山や日光のようなわくわくする場所にも行きましたし、息をのむようなお寺や庭園も京都や東京で訪ねました。そして、親切な人々との出会いもあり、忘れることはないでしょう。

最も印象強い深い出来事の1つは、下北沢のパブで行った講演で、東京人文学プロジェクトが主催したものです。 東京の中でも素敵な地域のひとつで開催されただけでなく、好奇心に満ちた国際的な参加者に私の研究をお話できる機会でした。 的確な質問が投げかけられたことや自分の考えが文字通り学者以外の人々に伝わっているという感覚は得がたいものでした。何よりも参加者が、国境を越えた視点という私の研究の切り口に本当に興味を持ってくれているようで嬉しかったです。

 

海外や異文化での研究を考えている学生・若手研究者にアドバイスをお願いします。
どんな恐れをも乗り越えて、荷物をまとめて、ただただ行くことだけをお勧めします。行き先は、遠ければ遠いほどいいと思いますよ! 外見が日本の大多数の人と違ったり、私自身の名前が全く通じなかったりして、全く異なる文化を体験したのは、初めてのことでした。 もちろん、しんどい日もありました。落ち込む朝もあることを覚悟しておいた方がいいですね。

とはいっても、全体的に見て、今までの私の人生で最も貴重な経験でした。相手の立場に立って相手のアイデンティティーを理解することの重要性を肌で実感しました。新しいアイデンティティーや文化を体験することでしか、自分自身の中に他者を発見し他者の中に自己を発見できないと思うんです。このような考えは私自身の学術研究に関連するだけではなく、平和的な対話や文化的な出会いの必要性を忘れがちな地球市民としての生活にまさに必要です。

 

クラウディア・デッラカーサさん
クラウディア・デッラカーサさんは、芸術・人文リサーチ・カウンシル(AHRC)の奨学生として英国ダラム大学の博士課程2年生に在籍し、日本文化がイタリアの作家イタロ・カルヴィーノ(Italo Calvino)に与えた影響ついて調査研究を行なっています。クラウディアさんは、査読誌「人文科学のMHRAワーキングペーパー」の大学院生編集者です。博士課程に進学する以前は、ローマ・ラ・サピエンツァ大学で現代文学の学士号と言語学の修士号を取得し、同大学の'Laboratorio Calvino'の一員でもあります。

クラウディアさんは時間を見つけては、歴史的な街や自然保護区を旅したり、映画を見たり、読書を楽しんだりしています。彼女はスポーツも大好きで、イギリスの天気が許してくれる限りランニングに励んでいます!

 

Twitter:@Cla_Dellacasa