No.046 - 文部科学省エントランス展示「武器をアートに――モザンビークにおける平和構築」

文部科学省エントランス展示「武器をアートに――モザンビークにおける平和構築」

 

 

人間文化研究機構総合情報発信センター

 

 文部科学省では、省内の広報スペースを活用し、大学・研究機関等における成果や特色ある取組を展示物として紹介する広報を実施しています。全国の国公私立大学・研究機関等から採択された企画が文部科学省の正面入口にて展示され、数多くの来訪者の目にふれることとなります。
 今回は、2020年1~2月に実施した文部科学省エントランス展示についてご紹介します。

 

文部科学省エントランス展示「武器をアートに――モザンビークにおける平和構築」
(期間:2020/01/07~02/10)

 

 アフリカのモザンビークでは、1975年の独立後1992年まで続いた内戦の結果、戦争終結後も大量の武器が民間に残されました。この武器を農具と交換することで回収し、武装解除を進めるとともに、回収された銃器を用いてアートの作品を生み出し、平和を人びとの心に根づかせようという、TAE(Transformação de Armas em Enxadas/Transforming Arms into Plowshares)「銃を鍬に」プロジェクトが進められています。このプロジェクトは、内戦後の平和構築のモデルとして注目を集めています。
 2012年、このプロジェクトの一環として、フィエル・ドス・サントス、クリストヴァオ・カニャヴァート(ケスター)の二人のアーティストの手で、日本に住む人びとへのメッセージを込めて4点の作品が制作され国立民族学博物館(民博)におさめられました。本展示では、そのうち3作品「肘掛椅子」「フルートを吹く男」「ギターを弾く男」を展示しました。

 

人々の行き交う正面玄関横に展示された作品

 

 

 実はこれら作品に使われた武器に、どれひとつとしてアフリカで作られたものはありません。外国から持ち込まれた武器が、モザンビークの内戦で使われ、今もその多くが土の中に埋められているのです。
 会場に設置されたモニターには、このプロジェクトにより武器を手放した人のインタビュー映像が映し出され、私たちに平和について問いかけます。
 来訪者にとって、アートや博物館の活動を通じた平和構築の意義と可能性を、改めて見つめなおす機会となったのではないでしょうか。

 

「本物の銃なの?」

 

 

 展示期間中には、吉田憲司氏(民博館長)による「武器をアートに――アフリカ・モザンビークにおける平和構築の営み」と題したトークイベントを実施しました。多数参加者を集めた本イベントでは、「欧米諸国と日本における武器のうけとめ方の対比について」や「武器との交換品の確保について」等、会場から活発な意見・提案があり、活気ある会となりました。

 

トークイベントの様子

 

 

人間文化研究機構は、人間の文化活動並びに人間と社会及び自然との関係に関して研究しています。このため、社会に対して「真の豊かさを問うこと」により、社会と研究現場との応答を重ねていくことが必要です。今後も、人間文化研究機構では、毎年様々なイベント等を開催して一般及び研究広報を推進するとともに、「双方向情報発信」を目指した人文知コミュニケーターの組織的育成事業を実施するなど人文知の環流を推進しています。

 

 


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