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vol00/<危機>の時代に
人文知コミュニケーター座談会

コロナ「危機」に当たって人文学の研究者は何をすべきか生活者と研究者の視点から、人文知コミュニケーターが語り合う

  昨今のコロナ事態にあたって、私もみなさんも、この社会を生きる一人の生活者として感じていることが色々あると思います。一方でわれわれは研究者でもありますから、それぞれの研究と関連して見えてきていることもあると思います。そういった、生活者と研究者の視点を併せ持つ立場から何かを発信していくべきなんじゃないかと思い、この企画を提案させていただきました。
個人的には、これまでの活動は映像を用いた取材や、多くの人が参加するイベント主催など、対面を前提とするものが多かったんですが、それができなくなってきた現状があります。そこで人文知コミュニケーターとして何ができるかを考えているうちに、この企画にたどり着きました。また、ようやく人間文化研究機構のほぼ全ての機関に人文知コミュニケーターが配置されたので、共同企画を通して何が生まれるかを試してみたいとも思いました。
ただ、自分一人の研究だけでは限界があるので、私たちがアクセスできる研究者にも話を聞いて、それをわかりやすい形にまとめて発信してはどうかと思います。もし、この趣旨に賛同していただけるのであれば、形式やコンセプト、扱うテーマなどについて話し合いたいと思います。

  企画の趣旨に関連してですが、コロナのような疫病の危機の混乱に紛れて、人文知をこれまで軽んじてきたことに対する批判や、人文学への予算配分に対する不満が新聞などに寄稿、投稿されるようになってきていると感じます。われわれのこれからの取り組みも、このコロナの風潮に付け込むように「人文知が大事だ」と言っているように捉えられはしないかという心配があります。なので、まずコンセプトを決めるのが大事だと思います。且つ高尚な立場から人文知の危機や人文知の必要性を叫ぶというのとはちょっと違う視点でやりたいですね。

河合  人文知というのは元々、人文学のみを指すのではなく、自然科学までも包含する「人間の知」だと堀田さんが教えてくださって、「ああ、そうか」と思ったんです。人文知コミュニケーターとして頑張っていくためには、粂さんが言ったように、バランスをとって研究・発信を進めることが大切だと思います。

  私の趣旨も粂さんの考えに近いです。われわれのコンセプトとしては「各論」ですよね。人文学はこうだというようなことを言う立場でもないし、というか言えないしね。どちらかというと私たちが今発見していることをもうちょっと掘り下げてみて、「こういう視点があるよ」ということを提示することが大事だと思います。

大石  私も皆さんと同じで、高尚ではないが、単なる発信だけでもないものにできたらいいなと思います。コミュニケーターという名前が付いているので、もう少し一方的でない形にはしていきたいなと。どうやったら面白いかとかやりやすいかなというのは、色々工夫したいですね。

堀田  人文知の危機についてはおいおい、色々な形で向き合うことになると思いますが、今は生活者の人たちが感じている何かにツンツンと触れられるような、そういう人文知のアプローチがしていけたらいいですね。

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