vol01/在宅勤務の中での出会い
研究者のおうち時間①

新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)によって引き起こされた「危機」に際して、人文学の研究者は何をすべきか。また、研究と社会をつなぐ人文知コミュニケーターに今できることは何か。そういう問いから、人文知コミュニケーター初の共同企画「くらしに人文知〜コロナ時代を生き抜く」の連載を始める運びとなりました。人文知コミュニケーター独自の眼差しで、人間文化研究機構内外の研究者との対談や、関係者のインタビューなどを掲載していく予定です。

非日常のなかでの思わぬ出会い。子猫を拾った日本語学者の話。

在宅勤務の中での出会い {猫・ねこ・ネコ}
岩崎拓也 人文知コミュニケーター(人間文化研究機構 国立国語研究所)

 コロナ禍のなか、在宅勤務が進み、働き方が変わった。
 私は基本的に研究室でしか集中できないため、非常に困った。書籍も家にはほとんど置いていないため、あきらかに効率が悪くなり辟易していた。そんななか、(語弊はあるが)初めてコロナ禍でよかった、在宅勤務できてよかったと思ったことが起こった。

2020/10/18
 百均に行ったら、猫を保護した。

 私は引きこもり生活を送るために料理道具を新調し、料理スキルの向上に努めていた。
 スキルが上がるにつれて、器にも凝り出した。「食器は料理のきもの」とはよく言ったものだ。角煮にあう、深い青色の小皿がほしくて、適当にいい感じのお皿を探しに行った。行きしなに都電荒川線の踏切を越えるのだが、線路脇に警察官と若者がたむろっている。近寄ってみると、にゃーにゃーと声が聞こえてきた。
 「あー、おそらく猫がいるんだなあ、出てこれないんだなあ」
と思いつつ、横を通りすぎ、目的のお皿にくわえて猫のエサも買った。帰りしなにまだいるようなら、エサで釣ってはどうか提案しようと思ったからだ。

 帰り道、線路を通ると、まだ人だかりが。エサを渡したが、なんと同じことを考える人は当たり前にいるもので、すでにシーチキンが置かれていた(本当は猫にシーチキンはよくない)。線路横なので電車が通る。そのため、なかなか思うように捕獲できない。
 私がきてから2,30分経ってようやく捕まえることができた。警察官は「あまったシーチキンは処分しておきますね」と言って、帰っていってしまった。残された我々は、このネコを保護するための段ボールを探し、今後どうするかという話し合いになった。段ボールは近所のラーメン屋からもらった。さらには、その場にいたお兄さんが段ボールに使うガムテープとネコを包むためのバスタオルを買ってきてくれた。

 できる大人は行動力が違う。

 その場で引き取り手が見つからず、どうしていいかわからないので、いろいろ話し合った末、結局私が引き取ることにした。その場にいる人々が保護してくれるなら、とカンパをしてくれた。お兄さんは財布に入っていたお札を全部くれた。やはりできる大人は行動力が違う。私は、その場の人々に猫を預け、近くのスーパーに急いで砂やエサなどを買いに行った。
 その後、段ボール入りのネコと帰宅し、まずは汚れを落とすためにシャンプーをした。私はようやく獣臭なのか、排水溝の臭いなのかわからない臭さから解放された。えさをあたえると謎の言葉を発しながら、一心不乱に食い続けていた。

 翌日、病院に行き、健康状態を見てもらい、ノミダニの駆除の薬をつけてもらった。この日以降、生後2ヶ月の男の子が我が家の一員になった。しかし、やはり子猫は子猫。家において仕事には行けない(ケージなどもまだなかった)。
 在宅勤務が許される今だからこそ、面倒を見ながら仕事ができる。本当にタイミングが良かったと思えた。

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