No.023 - そうだ人文機構、行こう - 外来研究員ヘレナ・チャプコヴァーさんの場合

そうだ人文機構、行こう - 外来研究員ヘレナ・チャプコヴァーさんの場合

人間文化研究機構(人文機構)では、2007年に英国の助成機関である、芸術・人文リサーチ・カウンシル(AHRC)と覚書を締結し、日本研究を志す英国の大学院生や若手研究者を本機構の研究機関で受入れて、研究指導を行っています。今回は、国際日本文化研究センター(日文研)で受け入れたヘレナ・チャプコヴァーさんに、ご自身の研究活動や外来研究員としてのご経験についてお話を伺いました。チャプコヴァーさんは、現在、早稲田大学の助教として美術史を教えています。

 

現在の研究課題や取り組んでいるプロジェクトはどのようなものですか?

2012年に博士の学位を取得して以来、私は、ヨーロッパや在日外来研究員としての研究期間に温めてきた研究プロジェクトやアーティストとのネットワークを広げ続けて活動しています。今は、1920年代、1930年代の日本および中欧における越境的な表象文化に関心があります。

現在進行中の研究プロジェクトを1つご紹介するならば、日本人とバウハウスとの接点に関する研究です。この研究プロジェクトは最近、「バウハウス100 /バウハウスイマジニスタ」と呼ばれる大規模な国際プロジェクトの一つに組み込まれることになりました。この国際プロジェクトによって、バウハウスに触発された現代日本のデザインの歴史が国際的に知られるきっかけになるので、非常に興奮しています。

 

5年後、そして10年後、あなたは何をしていると思いますか?

私が大好きな、美術史や日本学の研究プロジェクトの発展や教育活動に従事していたいと思います。

 

日文研で研究を開始する初日に、知っておきたかったことは何ですか?

私はもっとリラックスして、ゆったりと構えていればよかったと思います。 日文研は、若い研究者にとって本当に活気にあふれた刺激的な場所です。外来研究員の間は稲賀先生が指導してくださいました。大変素晴らしい方で、たくさん支援してくださいました。

 

外来研究員として日本に滞在し、最も記憶に残った出来事は何でしたか?

いくつかありますが、一番鮮明に覚えているのは、チェコの建築家であるベドジフ・フォイエルシュタインから、日本人建築家である土浦夫妻への書簡を発見したことです。このような記録が個人であつめたコレクションに現存するとは思ってもいませんでしたので。私が手紙の写しを入手できたのは、仲介、支援してくれた同僚達がいたからです。とりわけ、日本では人脈が重要であり、人を介して、よい方と知り合えたことが書簡の発見につながったと思います。

 

外国で研究しようとしている学生や若手研究者にアドバイスをお願いします。

前出の回答にあるとおり、人脈を広げることです!外来研究員のような若手研究者は、さまざまな研究者に紹介してもらえる最高の立場です。こういった機会をとらえて、人的なネットワークを作ることが、将来のキャリアを形成する上でも必要不可欠だと思います。

 

ヘレナ・チャプコヴァー助教

ヘレナ・チャプコヴァーさんは、助教として早稲田大学国際教養学部で美術史を教えています。チャプコヴァーさんは、戦時期に日本と中欧との間を結ぶことに貢献した、アーティスト間の交流を中心に研究しています。このほか、多国間ビジュアルアート研究、ジャポニズム、モダニズム、20世紀建築、デザインと写真などにも関心があります。チャプコヴァーさんは、学部から修士課程までは、チェコスロバキアのチャールズ大学と英国のSOAS(ロンドン大学東洋アフリカ研究学院)で美術史と日本学を学び、博士号はロンドンの芸術大学のTrAIN(Transainational Art Identity and Nation)研究センターで取得しました。

チャプコヴァーさんの著作には、Transnational networkers - Iwao and Michiko Yamawaki and the formation of Japanese Modernist Design (2014)や、“Bauhaus and tea ceremony: a study of mutual impact in design education between Germany and Japan in the interwar period”Eurasian Encounters: Intellectual and Cultural Exchanges, 1900-1950 (2016)など、モダニズムにおける新教育運動の役割に焦点を当てたものがあります。また、チャプコヴァーさんはチェコの純粋主義の建築家であり、前衛的な舞台建築家であるベドジフ・フォイエルシュタインと日本の関係に関する著書、Bedřich Feuerstein - Cesta do nejvýtvarnější země světa, (Kant/Aula, Praha, 2014)を執筆しています。

チャプコヴァーさんの休日の楽しみは、日本人の友人らと展覧会や劇場に行くことです。