寄附のご案内:人文機構基金

機構案内

機構長戦略室だより Vol.6

第4期中間振り返り

第4期中期目標・計画期間も半分が終わり、4年目に入りました。ここまでの機構長戦略室の活動を振り返ってみましょう。

これまでの中心的な検討課題は、「研究者データの整備・活用」「広報体制、メディア対応の強化」「国際化・国際交流への対応」でした。このうち「研究者データの整備・活用」は、人文機構の強みを分析するためにも機構の研究を広く社会に知ってもらうためにも、最重要課題です。そこで、機構長戦略室ではこの課題に優先的に取り組むこととし、機構長戦略室の特任研究員が、IRデータの収集方法、システムの構築方法を検討し、各機関との調整を重ねてきました。その結果、令和7(2025)年3月に人文機構のホームページで全教員の「研究者総覧」を公表するに至っています。現在は、研究者氏名のアルファベット頭文字と機関名で絞り込んで見ることができますが、今後、研究等に関わる任意の単語で検索することもできるように改善していく予定です。

「広報体制、メディア対応の強化」については、メディア懇談会、プレスリリースを強化する方向でこの問題に取り組んできましたが、まだ課題が多く残されています。もちろん、展示やシンポジウムなどのイベント紹介は、人文機構本部のホームページや各機関のホームページで随時、公開しています。また、各機関の研究者が執筆した文化関係の記事や研究者へのインタビュー記事は、全国各地の新聞、テレビ、ネットなどで大変多く紹介されています。しかし、機構として広報をどう戦略的に展開していくのかといった検討が、まだ不十分なのです。本機構の中には、大変優れた研究なのに社会に知られていないものがたくさんあります。このような研究を機構としてどう打ち出すのか、さらに検討していきたいと思っています。

「国際化・国際交流への対応」については、「機構長戦略室だより」Vol.4、Vol.5で報告したように、令和6年9月にフランスのパリ日本文化会館(MCJP)、社会科学高等研究院(EHESS)日本研究センター(CRJ)、オランダのライデン大学国際アジア研究所(IIAS)、ドイツのボン大学を訪問して、新型コロナウイルスのために中断していた交流を再開しました。特に、ボン大学との共催シンポジウム ‘Disaster and the Humanities: Preservation, Management, and Heritage’「災害と人文学:保存、管理、遺産」の開催は、今後の交流に繋がる大きな成果でした。

ベトナム国家大学ハノイ校人文社会科学大学との交流も再開しました。令和5年11月には、同大学東洋学部日本研究学科・日本研究専攻の教員と大学院生が機構本部および歴博を訪問し、歴博では文化財保存についての講義を行いました。また、令和7年2月には同専攻の教員と大学院生が日文研を訪問し、日文研では中国と日本の歴史・文化に関する講義を行いました。これらの国際交流は、いずれも機構長戦略室の特任研究員が中心となって企画し、実現したものです。

国際化に関しては、もう一つ大きな進展がありました。それは、機構として国際的な出版を推進するために、オランダに本社を置く国際的な学術出版社、ブリル社(De Gruyter Brill)とオープンアクセス書籍シリーズ「NIHU Studies in the Humanities」の刊行に関する合意文書を令和6年6月に締結したことです。このシリーズは、機構の6機関に所属する研究者による研究プロジェクトの成果を、英文のオープンアクセス(OA)単行本及び論文集等として刊行するもので、現在、すでに数冊の刊行準備が進んでいます。令和7年度末には刊行が開始されることと思います。

これらを受けて、今年度の機構長戦略室の検討課題をどう設定するかですが、最初に述べたように、今年度は第4期の4年目にあたります。4年目終了時には、4年間の活動の自己点検報告書を提出することになっていますので、今年度はこの作業をする年になります。これに加え大学共同利用機関は、文部科学省の科学技術・学術審議会 学術分科会 研究環境基盤部会が実施する検証のための報告書を作成しなければなりません。言うまでもなく、自己点検は次へのステップのために行う作業です。したがって、自己点検を行うということは、同時に第5期の研究や運営をどう計画するか、また、さらに長期的なビジョンをどう策定するかということを意味します。これらを踏まえて、令和7年度の機構長戦略室の検討課題を以下のように定めました。

1.第5期へ向けての準備
2.人文系研究評価システムの確立に向けての意見のまとめ
3.広報、社会連携の強化について
4.国際化・国際交流への対応
5.研究者データの整備・活用

本機構では、令和8年度に「将来構想検討会議(仮称)」を設置して、第5期や長期的な視野に立つ具体的な研究・運営計画をそこで策定することにしています。1では、この会議がスムーズに活動を開始するための準備づくりを行います。

2の人文系研究評価システムについては、すでに令和4年度から「人文系研究評価研究会」で検討してきましたが、いよいよ本年度に「まとめ」を提出することになります。この「まとめ」の案を機構長戦略室で議論し、文書を確定したいと思っています。

3~5は、上にも述べたとおり、これまで機構長戦略室で検討し、実行してきた項目です。そのさらなる充実と不足を補うための検討を行う予定です。

人間文化研究機構
機構長 木部 暢子

機構長戦略室ページに戻る