vol.007 - 方言の記録と継承による地域文化の再構築

方言の記録と継承による地域文化の再構築

 

人間文化研究機構・総合人間文化研究推進センター研究員 

原田走一郎

 

科学技術の進展にともない、人類社会は大きく変化してきました。ことばも例に漏れず、急激に変化していると言えます。実は、世界で話される言語の数は21世紀中に半減するとされています。言語が消滅する、というのは想像しにくいことかもしれませんが、これを方言に置き換えると理解しやすくなるかもしれません。自分が今話していることばと、おじいさん、おばあさんたちが話していた(いる)ことばは明らかに違う、という人がほとんどではないでしょうか。このように考えると、各地の方言も程度の差こそあれ、消滅の危機に瀕していると考えられます。国立国語研究所および人間文化研究機構広領域連携型基幹研究プロジェクト「日本列島における地域社会変貌・災害からの地域文化の再構築」の国立国語研究所ユニット「方言の記録と継承による地域文化の再構築」では、このような方言の記録を作成するための活動を行っています。

方言の研究は日本語の歴史的発達の解明などに必要です。しかし、学問上の要請だけではなく、地域の人々から方言の記録を作りたい、という声が聞かれることも多くあります。その声を第一に受け止めるのはその地方の大学です。しかし、その大学に方言の記録を作成するノウハウがあるとは限らず、その知識や技術に対する需要は高いと言えます。そこで国立国語研究所では、そのノウハウを地方の大学に伝え、方言の記録作成活動を活性化しようとしています。

このような活動の一環として昨年、島根大学法文学部と連携し、島根県隠岐の島町で調査を行いました。この調査には島根大学の学生と他の大学の大学院生合計11名が参加しました。ほとんどの学生が方言調査の経験がなかったため、事前研修を行ったうえで、調査に臨みました。この事前研修では、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所と国立国語研究所の研究者が調査方法について講習を行いました。このように東京の研究機関と地方大学が手を結んで調査を行うのは、初の試みでした。実際の現地調査では学生が活躍し、方言の単語600語、アクセント、動詞活用などの資料が収集できました。今後も国立国語研究所ではこのような活動をとおし、方言の記録作成、そして各地の大学の教育活動に貢献していく予定です。

 

 

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事前研修で自分たちが収録した録音を聞いてみる島根大学の学生たち

 

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隠岐の島調査で話者の方に質問する研究者・学生