vol.009 - 北東アジアにおける資源の持続可能な利用

北東アジアにおける資源の持続可能な利用

 

人間文化研究機構 総合人間文化研究推進センター研究員

伊藤 岳

 

 2017年1月18日、人間文化研究機構 北東アジア地域研究推進事業・富山大学 極東地域研究センター拠点において国際シンポジウム「北東アジアにおける資源の持続可能な利用」(共催:人間文化研究機構、後援:富山県)を開催しました。北東アジア地域研究推進事業において、富山大学拠点は経済分野の研究を担っており、特に平成28年度は北東アジア地域における森林・木材資源の国際分業・持続可能な資源利用を中心に研究を進めてきました。本シンポジウムは、日本・中国・韓国・台湾の研究者と富山県の実務家を招聘し、研究者間の議論を通した研究水準の向上と、一般公開セッションを通した研究成果の社会への発信を主な目的として開催しました。上記のような学内外のご協力を得て、本シンポジウムでは、「北東アジア」と「森林・木材資源」をキーワードとした多様な研究報告・講演を提示することができました。

 当日の様子は、『北日本新聞』『読売新聞』をはじめ合計4紙で紹介され、富山県における北東アジア地域や森林・木材資源への関心の高さをうかがい知ることができました。

 

研究者向けセッション

 研究者向けの英語セッションでは、中国人民大学・韓国江原大学校・国立台湾大学の研究者、および北東アジア地域研究推進事業・国立民族学博物館拠点と富山大学拠点の研究者が研究報告を行ない、活発に議論を交わしました。このセッションは、経済学的アプローチに基づく理論研究と実証研究だけでなく、文化人類学的アプローチに基づく研究報告があり、また富山大学拠点の自然科学系の教員も討論者として参加するなど、学際色豊かなものとなりました。徐世勳教授(国立台湾大学)からは、環太平洋自由貿易協定(TPP)が台湾の森林・木材関連産業に与える影響を、経済モデル(一般均衡モデル)とシミュレーションを用いて検討した理論的な報告がありました。趙国慶教授(中国人民大学)と馬駿教授(富山大学)からはそれぞれ、化石燃料価格の変動および日中韓における木材貿易を巡る、計量経済学の手法を用いた実証研究の報告がありました。金俊淳教授(韓国江原大学校)からは、経済学的アプローチに基づく生態系・環境評価手法と韓国の森林へのその応用についての報告が、続く池谷和信教授(国立民族学博物館)からは文化人類学的視点と調査に基づく、日本における非木材林産物(non-timber forest products)の利用・管理についての報告がありました。

 

一般公開セッション

 一般公開セッションは今村弘子教授(富山大学 極東地域研究センター・センター長)の挨拶で幕を開け、日中韓3カ国の木材・森林関連産業・貿易に着目した4つの講演がありました。セッションの前半では、金世彬教授(韓国忠南大学校)の「韓国木材産業の発展と展望:産業組織論的アプローチ」と題した講演と、永田信教授(東京大学)の「戦後日本の70年の木材需給と今日の森林の姿」と題した講演がありました。2つの講演では、日韓両国における木材産業の歴史・現状に加えて、国産材活用推進のような課題を両国がともに抱えていることも浮き彫りとなりました。

 孔祥智教授(中国人民大学)からは「中国の林業政策および木材流通システム」と題して、中国における森林・木材関連資源・貿易の現状、および森林保護のような政策課題を概観する講演がありました。さらに、清水真人参事(富山県農林水産部)からは「富山県産材の利用促進による森林資源の循環利用」と題して、富山県に着目した講演がありました。同講演では、県産材を取り巻く木材需給・産業・価格の現状と、公共建築物の木造化促進や県産材を利用した木造住宅の新築・増改築への助成といった、県産材利用を巡る行政の施策について説明がありました。

 

 北東アジア地域研究推進事業 富山大学拠点では、今後もこうした国際的・学祭的な学術会議とその成果の社会への発信・還元に取り組んでいきます。

 

 

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研究者向けセッションで議論が行われている様子

 

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一般公開セッションの様子