vol.035 - 地域と都市が創る新しい食文化

 

和食がユネスコ無形文化遺産に登録され5年が経ちました。海外における日本食レストランも約12万店にのぼり10年前の2倍に増えています。日本を訪れる外国人数も2018年は3000万人を超え、5年前の3倍となるなか、観光地でしたいことの第3位には郷土料理がはいるなど、海外からの日本の食文化への視線は地方にまで及んできています。

日本国内でも、2014年に山形県鶴岡市は日本唯一のユネスコ食文化創造都市として認定され、地域固有の食材や食文化が再認識されるとともに、都市との連携による食文化産業を振興させ、地域経済や文化の発展につなげようという取り組みが始まっています。
人間文化研究機構は2018年12月4日、公益財団法人味の素食の文化センターと共催で、シンポジウム「地域と都市が創る新しい食文化」を味の素グループ高輪研修センター(東京都港区)にて開催し、生産者、消費者、研究者そして行政が一体となって、地域の食材や食文化といった資源を未来に残していくための方策について考えました。

はじめに、鶴岡市のイタリア料理店「アル・ケッチァーノ」オーナーシェフの奥田政行氏より「食を通した人づくり地域づくり」と題して、食を通じて地域を元気にしていく取り組みについて、ご自身の経験をもとにした講演がありました。続いて、石川智士東海大学教授より「「食」が育む地域の可能性-エリアケイパビリティーアプローチから見た食の重要性-」と題して、研究者、行政、漁業者が協働した持続可能な海洋資源利用や地域活性化の在り方についての講演がありました。

トークセッションでは、冒頭で田村典江総合地球環境学研究所プロジェクト上級研究員より北米のフード・ポリシー・カウンシル(※)について紹介がありました。その後、ハイン・マレー総合地球環境学研究所副所長の進行により、食資源を未来にわたって利活用していくためには、自分の地域をよく知り、自信を持つこと、そして地域資源の保護活動が外部から評価されることによって自身の活動にプライドを持つことが重要であること、従来の生産と消費を分離した都市型のフードシステムを見直し、消費者もシステムの中に取り込んだ新しいフードシステムを作っていくことで、持続可能な食を提供できる社会システムを作っていくことが求められていることなど、多角的な視点から意見が出されました。

※地域のフードシステムの問題を解決することを通じて、町づくりや環境といった都市の課題に行政、市民、事業者が総合的に取り組む組織。

文責:人間文化研究機構特任助教 菊池百合子

奥田氏による講演

石川教授による講演

会場の様子