No.054 - アンドルー・ゴードン教授が第2回日本研究国際賞を受賞

アンドルー・ゴードン教授が第2回日本研究国際賞を受賞

 

 このたび、第2回人間文化研究機構日本研究国際賞は、ハーバード大学教授のアンドルー・ゴ―ドン氏に決定しました。ゴードン氏は、北米を代表する近現代史研究の第一人者として国際的にも高い評価を受けてきました。近代日本労働史研究を専門とされ、その研究成果は広く世界的に知られています。ここでは、ゴードン氏が受賞者としてふさわしい研究活動をご紹介します。

 第一に、専門分野である近代日本労働史研究の卓越した研究業績です。その代表的な著作には 、『The Evolution of Labor Relations in Japan: Heavy Industry,1853-1955』(1985)(高度経済成長期 以降を書き加えた日本語版は、二村一夫訳『日本労使関係史-1853-2010』(2012))、『Labor and Imperial Democracy in Prewar Japan』(1991年)、『The Wages of Affluence: Labor and Management in Postwar Japan』(1998年)、『ミシンと日本の近代-消費者の創出』(2011年)などがあります。これらは水準の高い精緻な研究として定評があり、その独自性、視野の広さと関心の深さは日本史研究者を大いに刺激してきました。

 第二に、日本近現代史研究での多方面にわたる研究活動です。その一端は、ゴードン氏が編者となって刊行された『歴史としての戦後日本』(1993年)(日本語版2002年)にみられます。多岐にわたる分野でアメリカを代表する日本近現代史研究者9人によって構成された日本語版の本書は、体系的包括的な戦後日本の歴史像を提起する論文集として高い評価を得ています。また、ハーバード大学ライシャワー日本研究所の所長として、長きにわたって日本研究を牽引され、多くの国際会議を組織されてきました。

 第三に、幅広い教育活動です。2002年に刊行されたスタンダードな歴史書である『日本の200年-徳川時代から現代まで』(2013年)はハーバード大学およびデューク大学での20年以上にわたる講義に基づいていますが、その特徴は、政治、経済の歴史に偏することなく、社会、文化の面にも目配りしながら、日本近現代史のバランスの取れた信頼のおける通史として、北米の多くの大学で教科書として用いられています。出版されて以来、版を重ね、さらに中国語や日本語、韓国語にも翻訳されています。後進の教育の面でも、ゴードン氏の教えを受けたかつての大学院生たちは現在、全米各地で教鞭をとっており、アメリカにおける日本近現代史の研究、教育に従事しています。

 第四に、活発な発信活動です。2011年の東日本大震災に際しては、震災直後に東北地方へ現地調査に訪れ、その後、ライシャワー日本研究所において、国際規模のデジタルアーカイブ・サイト「2011年東日本大震災デジタルアーカイブ」の作成を指揮されました。米国の教育機関や報道機関と連携し、震災に関わる大量のデジタル情報をアーカイブとして収集し、貴重な情報を長く残し活用することによって、将来にわたって防災・減災に対する造詣の深い人材を育てることを広く訴える活動をされてきました。
 人間文化研究機構日本研究国際賞の選考委員会では、このようなゴードン氏の幅広い研究活動を高く評価し、2020年の人間文化研究機構日本研究国際賞の受賞者にアンドルー・ゴ―ドン氏を選出しました。来年の初夏には授賞式と受賞記念講演を都内で予定しており、私たちとしてもゴードン氏との交流を楽しみにしています。

文責:人間文化研究機構理事 李成市

 

ハーバード大学教授アンドルー・ゴ―ドン氏の著作