No.064 - 第4期人文系情報基盤への期待

第4期人文系情報基盤への期待

 

 人間文化研究機構(以下、機構)では、機構内6機関が作成・公開している多くのデータベースを、1度の操作で横断検索できる、高度連携システム「nihuINT」を運用しています。このような「横断検索」の仕組みは、現在ではインターネット上にいろいろなものがあり、あまり珍しくもないかもしれませんが、機構がこの公開運用を開始した2008年、いまから13年前には、かなり先端的な取り組みだったといえるでしょう。nihuINTは、機構の研究資源共有化事業を支えるシステムとして、その後国立国会図書館京都大学東南アジア地域研究研究所のデータベースとも連携し、さまざまな検索・表示機能を追加しながら、170以上のデータベース、550万件以上のデータを検索することができるシステムとして、現在に至っています。

 一方、2020年8月に、国立国会図書館が運用する国の分野横断型統合ポータル「ジャパンサーチ」が正式公開されました。さまざまな機関のデータベースを1度に検索できるもので、人間文化研究機構も現在40以上のデータベースを提供しています。このジャパンサーチの登場により、13年前と現在とでは、研究資源の利活用に関する環境もかなり変化しました。来たる2022年4月からの第4期における機構の情報事業のありかたも、そうした変化に対応したものでなくてはなりません。

 第4期における情報事業のありかたについては、機構内部でも議論が続けられていますが、機構外にも公開され、さまざまな方と意見を交換できる場として、「第16回人間文化研究情報資源共有化研究会」が、2021年3月12日(金)に、オンラインで開催されました。この研究会は3つのブロックから構成されました。

 最初のブロックは、「「人間文化研究機構の情報関連事業第三期後半における 基本方針」に基づく高度連携システムのデータ構築計画に関する報告」でした。機構では、来年4月からはじまる第4期を見据え、現在の第3期後半に情報関連事業で取り組む基本方針を定めました。そこで強調されたのは、研究資源や知識をより連携しようということ、それによってより深くデータを利活用できるようにしようということでした。その方針の下、そういった目標に沿うデータ基盤の構築について機構内に提案を募り、今年度採択された2件について、国立歴史民俗博物館後藤真准教授、国際日本文化研究センター関野樹教授からご報告いただきました。偶然ではありますが、2件とも、人名データを構築し、他のデータとの連携をはかるための基盤にするというものでした。

 次のブロックは、「データ連携の課題と解決、「ジャパンサーチ」の現場から」と題し、国立国会図書館でジャパンサーチの利活用スキーマを担当されている奥田倫子さんと、セマンティックwebの専門家でいらして、ジャパンサーチには検討段階から深く関わっておられた、ゼノン・リミテッド・パートナーズ代表の神崎正英さんにお話をいただきました。昨年8月に正式公開された国の分野横断ポータル「ジャパンサーチ」には、前述のように機構からも現在40以上のデータベースを提供していますが、そのほかにもさまざまな分野・機関からのデータを受け入れて運用されています。そこには、多くの課題があったことが容易に推測されますが、そうしたことをどう乗り越えてこられたのか、そして「ジャパンサーチ」では具体的にどのような連携ができるのかといったお話をうかがいました。これからの情報基盤を考えるうえで示唆に富む内容で、参考にさせていただきたいと思います。

 最後に「第4期人文系情報基盤への期待」と題し、国立歴史民俗博物館の鈴木卓治教授の進行の下で、登壇者によるパネルディスカッションを行いました。ジャパンサーチの動向も踏まえながら、機構として今後取り組んでいくべきデータ構築、データ公開のありかたについての議論が展開されました。

 今回は16回目にしてはじめてのオンライン開催となり、また情報事業についての機構内での議論の行方を見ながらの準備であったために開催告知が直前になってしまったのですが、多くの方にご視聴いただき、登壇者へのご質問もいただきました。今回の議論も参考にしつつ、第4期人間文化研究機構の情報事業基盤について、その策定を進めます。今後の機構の情報発信事業に、大いに期待していただければ幸いです。

 なお、本研究会の模様は機構のYouTubeチャンネルから公開されています。

 

第3部のパネルディスカッションで議論を交わす登壇者ら。左上から時計回りに、国立歴史民俗博物館 鈴木卓治教授、人間文化研究機構総合情報発信センター大内英範特任准教授、国立国会図書館奥田倫子さん、国際日本文化研究センター関野樹教授、国立歴史民俗博物館後藤真准教授。

 

文:総合情報発信センター研究員 大内英範