No.084 - 味の素食の文化センター・人間文化研究機構共催シンポジウム「錦絵「大日本物産図会」にみる日本の食べものづくり―江戸~現代の食文化を考える」

人間文化研究機構・味の素食の文化センター共催シンポジウム「錦絵「大日本物産図会」にみる日本の食べものづくり―江戸~現代の食文化を考える」

 

人間文化研究機構は、平成28(2016)年から、味の素食の文化センターと連携したシンポジウムを企画・開催し、食の文化に関する研究成果を発信してきました。6回目となる今回は「錦絵『大日本物産図会』にみる日本の食べものづくり―江戸~現代の食文化を考える」をテーマに掲げた講演を令和4年11月11日に対面で開催しました。当日収録した映像は、令和5年2月10日から人間文化研究機構のYouTubeチャンネル味の素食の文化センターのYouTubeチャンネルで配信しています。

 

[講演1]大久保純一氏(国立歴史民俗博物館教授)

大久保氏の講演「三代広重『大日本物産図会』からみる江戸・明治の食文化」では、味の素食の文化センターが118枚の一揃いを所蔵している錦絵『大日本物産図会』の概説がありました。江戸時代後期に「図会」と呼ばれる出版物が増え、その中には各地の特産物を描いた物産図会が登場し、この物産図会が浮世絵の版画(錦絵)に取り入れられました。明治10年に出版された大倉孫兵衛編、安藤徳兵衛(三代目歌川広重)画の『大日本物産図会』は、日本の産業振興を目的として同年に開催された第一回内国勧業博覧会の美術部門で出品・販売されています。

● 錦絵「大日本物産図会」とは?

「錦絵」とは江戸時代後期に生まれた多色摺りの浮世絵版画で、明治後期にいたるまで江戸・東京の名産品として長く親しまれました。
「大日本物産図会」は、明治10(1877)年の第1回内国勧業博覧会に合わせて制作された錦絵の揃物です。三代歌川広重(1842-94)の作で、日本橋通一丁目の大倉孫兵衛が版元です。日本各地の名産物の生産にたずさわる人々の働く姿を描き出しており、全118図が知られています。

大日本物産図会 摂津国伊丹酒造之図
大日本物産図会 摂津国伊丹酒造之図

 

[講演2]青木隆浩氏(国立歴史民俗博物館准教授)

「近代の日本酒づくりー『大日本物産図会』を参照しながらー」と題した青木氏の講演では、ご自身の酒造現場への訪問体験を交えつつ、『大日本物産図会』を含む日本酒に関する図会や、『大日本物産図会』が出版された明治初期の日本酒の味の説明がありました。図会については、江戸時代の1799年に出版された『日本山海名産図会』の「伊丹酒造 米あらひの図」と対比等により、『大日本物産図会』の「摂津国伊丹酒造之図」と「摂津国新酒荷出之図」の細部や概説に対する違和感が紹介されました。

 

[講演3]奥井隆氏(奥井海生堂社長)

奥井氏からは「日本の食文化と昆布―その歴史と未来―」というタイトルで、昆布の歴史や食品としての特色、国際展開を含む流通が取り上げられました。昆布が一般的に食されたのは江戸時代中期以降で、北前船で昆布を北海道から運ぶルートが確立されたことによります。北海道で採れる昆布は地域別に4種類あり、格付けによって価格の決まることからワインに類似しているという説明がありました。昨今では、和食が世界に広がる過程で昆布にも注目が集まり、昆布を軸とした海外との交流が展開されています。

 

[トークセッション]
モデレーター松田睦彦氏(国立歴史民俗博物館准教授) パネリスト 青木隆浩氏、大原千鶴氏(料理研究家)、奥井隆氏

トークセッションでの話題は、「摂津国伊丹酒造之図」の描写において洗米と浸漬だけが取り上げられた点や、「同国(陸奥)津軽昆布採之図」と現代の真昆布漁が同じである点、水や料理に応じて昆布の種類を使い分ける点に及びました。更に話題は『大日本物産図会』以外にも、昆布や日本酒にまつわる今日の食文化や、水・海といった環境、人間、酒・昆布といった産物との関係にも広がり、盛況のうちに閉会しました。

トークセッションの様子
トークセッションの様子

 

(文責:大場 豪 人間文化研究機構 人間文化研究創発センター研究員)