No.094 - 調査研究の現場から @イギリス 国立歴史民俗博物館 橋本 雄太(はしもと ゆうた)さん

調査研究の現場から @イギリス
国立歴史民俗博物館 橋本 雄太(はしもと ゆうた)さん

人間文化研究機構では、機構のプロジェクトの推進及び若手研究者の海外における研究の機会(調査研究、国際研究集会等での発表等)を支援することを目的として、基幹研究プロジェクト・共創先導プロジェクトに参画する若手研究者を海外の大学等研究機関及び国際研究集会等に派遣しています。

今回は、イギリスに派遣された国立歴史民俗博物館の橋本雄太さんからの報告です。

 

 国立歴史民俗博物館准教授の橋本です。7月末から8月末にかけての1ヶ月間、イギリス・ケンブリッジ大学アジア中東学部に客員研究員として滞在しました。ケンブリッジ大学はオックスフォード大学と並ぶ英語圏最高峰の学術機関のひとつであり、13世紀の創立以来の非常に長い歴史をもつ大学でもあります。

 

サマースクールの会場

 

 私の滞在の目的は、日本研究分野の研究者や大学院生、司書を対象に開催されている「ケンブリッジ和本サマースクール」(https://wakancambridge.com/summer-school-2023/)に運営スタッフとして参加することでした。このサマースクールは、ケンブリッジ大学で近世日本文学を教えるLaura Moretti教授の主催するもので、毎年30名以上の参加者を世界中から集めるイベントです。

 

「みんなで翻刻」を利用する参加者

 

 2019年よりこのサマースクールでは私が開発している「みんなで翻刻」(https://honkoku.org/)を学習用ツールとして採用しており、今回のサマースクールでは開発者として初めて対面で出席することが叶いました。私は技術サポート役としてツールの使用法を参加者に対してレクチャーすると同時に、新バージョンの開発に向けて参加者からのフィードバック収集にあたりました。特にAI文字認識の利用頻度は非常に高く、くずし字教育においてAI技術の持つポテンシャルの高さを実感したように思います。

 

システムのレクチャーをする筆者

 

 滞在の後半には、ベルギー・ゲントで開催されるEAJS2023に参加し、ケンブリッジ大学での実践も含めた「みんなで翻刻」についての研究発表をおこないました。

 

 

橋本 雄太(はしもと ゆうた)
博士(文学)。国立歴史民俗博物館准教授。専門は人文情報学、近代西洋科学史。歴史研究や教育におけるコンピューター活用をテーマにシステム開発に取り組んでいる。これまで開発したシステムは「みんなで翻刻」「みんなで古写真」「日本の中世文書WEB」「くずし字学習支援アプリKuLA」など。