第42回人文機構シンポジウム「デジタル・ヒューマニティーズが拓く人文学の未来」

人間文化研究機構では大学や多様な研究組織とも連携しながら、人間文化に係る最新の研究成果をテーマとした「人文機構シンポジウム」を毎年度開催しています。第42回となる今回は「デジタル・ヒューマニティーズが拓く人文学の未来」をテーマに掲げ、令和6年7月27日に対面とオンラインでシンポジウムを開催しました。当日収録した映像は、NIHU ON AIRページまたは 人間文化研究機構のYouTubeチャンネルでご覧いただけます。
第42回人文機構シンポジウム
「デジタル・ヒューマニティーズが拓く人文学の未来」
デジタル・ヒューマニティ―ズ(DH)とは、情報学を背景とするデジタル技術を人文学に応用する手法のことである。人間文化研究機構では、DHは他分野の研究者が新たな研究領域を共創する場であり、また次の世代への知を創り出す基盤ともなると考えて、その推進を重要課題としている。
今回、日文研が「国際日本研究」コンソーシアムの研究者ネットワークを活用して開催する本シンポジウムは、まずDH分野の先駆である韓国からの現況紹介を受け、機構、上記コンソーシアム加盟研究機関、日文研学術交流協定校、それぞれ所属の研究者による報告と続き、最後に鼎談へと進む。デジタル環境の特性を活かし組織、国・地域、研究分野、などの壁をこえる連携や技術革新がテーマとなろう。市井の人にも馴染みある学問である人文学、その人文学の未来をDHで拓くという知的興奮を味わっていただきたい。
シンポジウムの前半は、3名の研究者による講演です。
まず韓国の高麗大学校の金氏は、人文学の新たな方法論としてのDHや、ご自身が担当しているデジタル人文学の授業、米国の大学や図書館での視察を述べた上で、ご自身の研究(中国の漢詩研究)におけるDHの活用事例が紹介されました。

続く永井氏より人間文化研究機構のDH推進室の紹介やDHの分類の後、ご専門である古代エジプトの文字(ヒエルグリフ)の調査でのデータベース化やオープンデータ化について述べられました。

最後の講演者であるクマレ氏から、認識論的美徳と認識論的価値の説明や、氏が研究対象としている日本の数学史において淡中忠郎による淡中相対理論の論文が取り上げられました。

シンポジウム後半では、総合司会の関野 樹氏を交えたパネル討論です。内容は会場やオンラインの参加者から各講演者に対する質疑応答だけではなく、データ公開や利用者のリテラシーの問題、AIの活用・人文学への影響・ツールもしくはプレイヤーとしての役割に関する意見交換が行われました。

各発表者の所属先と役職は2024年7月時点の情報です。
(文責:大場 豪 人間文化研究機構 人間文化研究創発センター研究員)