人間文化研究機構・味の素食の文化センター共催シンポジウム「方言で味わう郷土食の多様性 -変化と継承が紡ぐストーリーをたずねて」

人間文化研究機構と味の素食の文化センターは、食にまつわるシンポジウムを平成30年より毎年度共催しています。8回目を迎える今回のテーマは「方言で味わう郷土食の多様性 -変化と継承が紡ぐストーリーをたずねて」です。
TKPガーデンシティPREMIUM品川HEARTにおいて令和6年12月13日に収録した映像は、NIHU ON AIRページでご覧いただけます。また、人間文化研究機構のYouTubeチャンネルと、味の素食の文化センターのYouTubeチャンネルでも配信しています。
人間文化研究機構・味の素食の文化センター共催シンポジウム
「方言で味わう郷土食の多様性 -変化と継承が紡ぐストーリーをたずねて」
大西氏の講演「地図で見る食の方言の多様性 -調理物・料理法・味覚のことばの分析」では、主に1960年代の調査結果が取り上げられました。たとえば、砂糖の味は、日本の大半の地域では「アマイ」と表現するのに対して、東北や九州といった一部の地域では「ウマイ」と表現することが分布図を通して明らかになりました。

続いて、「料理への名付けと継承のありよう -郷土料理<しもつかれ>に注目して」と題した新井氏の講演で登場したのが「しもつかれ」です。これは栃木県を中心に北関東で食される郷土料理を指します。古くは似た料理が鎌倉時代の『宇治拾遺物語』にも登場し、その呼び名は「しもつかれ」だけでなく、「すむつかり」や「すみつかれ」など時代や地域ごとに違います。更にその調理法や食材も様々です。

最後の講演者である中井氏からは、「料理の定型化とことば -日本各地の雑煮に着目して」において、餅の形やだし、具材のみならず、食べ方のルールの違いなど雑煮の多様な実態が報告されました。雑煮は、比較的新しい料理で、規格化・定型化が進んでいないことが多様性の背景にあり、モノの多様性と言語との関係について述べました。

パネリスト 新井小枝子氏、中井精一氏
トークセッションのパネリストとして新井氏と中井氏の他に、料理研究家の土井氏と食文化の研究者である東四柳氏が加わりました。ここでは各パネリストが、食の調査時に話し手側のライフ・ヒストリ-(例 親の影響)がどう影響するのかといった質問への回答や、食べ物の命名や名称、翻訳等に関するコメントをしています。最後に、「辛口のお酒の辛口とは何か?」といった味覚の言語化の問題について、モデレーターの大西氏と各パネリストが意見交換を行い、壇上でも「辛口」についての捉え方に幅があることが分かるなど、盛り上がりの中で終演となりました。

(文責:大場 豪 人間文化研究機構 人間文化研究創発センター 研究員)