調査研究の現場から@アメリカ 総合研究大学院大学 西郷太一さん
人間文化研究機構では、機構のプロジェクトの推進及び若手研究者の海外における研究の機会(調査研究、国際研究集会等での発表等)を支援することを目的として、基幹研究プロジェクト・共創先導プロジェクトに参画する若手研究者を海外の大学等研究機関及び国際研究集会等に派遣しています。
今回は、アメリカに派遣された総合研究大学院大学学生の西郷 太一(さいごう たいち)さんからの報告です。
本派遣で、私は米国ハワイ州のハワイ大学マノア校(University of Hawaiʻi at Mānoa: UHM)に滞在し、少数言語の保存のためのドキュメンテーションに関する研究活動を行いました。UHMは、消滅危機言語の保存研究を国際的に先導する拠点の一つです。
私は、東京都新島で話されている新島方言のドキュメンテーションに取り組んでいます。日本国内では、伝統的に方言の文法研究が盛んである一方、言語資料の保存そのものを目的とするドキュメンテーションは、まだ確立した研究分野とは言い難い状況にあります。本派遣では、そのような国内の消滅危機言語研究の現状をUHMの研究者らと共有し情報交換をすることや、最先端の研究手法を学ぶことを目的としていました。


現在のドキュメンテーション研究では、研究者だけでなく、その言語を日常で実際に使用しているコミュニティメンバーが記録保存の中心的な担い手となることの重要性が国際的に広く認識されています。このような世界的な潮流のもと、UHMでは、コミュニティをドキュメンテーションの担い手として育成・支援することを目的としたLDTC(Language Documentation Training Center)という組織が学生を中心に運営されており、言語を後世に残すためのさまざまな活動が継続的に行われています。私の滞在中には、オセアニアのいくつかの言語話者が中心となり、地域に伝わる伝説や昔話を題材にストップモーションアニメーションを制作するワークショップが開催され、私も動画制作に参加しました。

滞在中には、UHMが中央大学・東京大学と共催している学生会議であるThe Sixth Chuo–UHM–UTokyo Student Conference on Linguistics, Psycholinguistics and Second Language Acquisition や、学内の定例セミナーであるTuesday Seminarで研究発表の機会があり、多くの有益なコメントをいただきました。
これらの経験を通じて、コミュニティ主体のドキュメンテーションの重要性を実感するとともに、今後、日本国内においてドキュメンテーションを確立した研究分野として発展させていくために活かせる、多くの示唆を得ることができました。
西郷 太一
総合研究大学院大学学生(博士後期課程)。専門は日本語学、少数言語の記録保存研究。東京都の新島で地域の方々と一緒に地域方言を記録し、後世に残すための取り組みをしている。




