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キャロル・グラック博士によるクラレ本社での講演会  

No.123
2025.09.17

 米国コロンビア大学歴史学のキャロル・グラック博士(ジョージ・サンソム教授職)は、第6回人間文化研究機構日本研究国際賞を受賞しました。2025年3月のグラック博士の来日に合わせて、一般財団法人クラレ財団の協力により講演会「不確実な時代を生きる: ある歴史家が見た21世紀(原題Living in Uncertain Times: A Historian's View of the 21st Century)」が株式会社クラレの本社で開催されました。

キャロル・グラック博士によるクラレ本社での講演会

 我々はどういう時代に生きているのか。本講演のテーマはグラック博士個人として、また歴史家としての心配事から生まれたものです。こうした問いかけは博士自身だけでなく、講演会に参加したクラレ社の従業員にも向けられました。「我々が今生きているこの時代の名前は何と言いますか。」この質問に対して、令和、現代、21世紀といった様々な意見が参加者から出ました。

 江戸時代が終わり、新しい時代を生きるという意識が強かった明治時代の人達は、「文明国」になるといった目標を持っていました。明治の転換期と異なり、現代という変化の多い時代に生きる我々はどこに向かっているのか分からない。また、この時代の終わりが見えない。曖昧で不確実性を有しているのが現代の特徴だとグラック博士は主張しつつ、世界秩序、経済、政治、社会、地球全体というこの時代(まだ「〇〇時代」という名前の付いていない、名無しの時代)の5つの挑戦事項を論じました。最後に、未来に影響を与えることができる現代に生きる1人として、また歴史家として何ができるのかが語られました。

 講演後の質疑応答では、参加者からいくつかの質問が寄せられました。歴史家はどのようにして、いい情報、もしくは後世に残していく情報を選ぶのか。今後、日本が国際社会の中で生かせる点や可能性は何か。各質問に対して、グラック博士は事例を織り交ぜつつ真摯に受け答えされていました。

キャロル・グラック博士によるクラレ本社での講演会
キャロル・グラック博士によるクラレ本社での講演会

(文責:大場 豪 人間文化研究機構 人間文化研究創発センター研究員)

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