研究資源共有化推進事業とは

 研究資源共有化事業では、機構6機関と地域研究の諸拠点が開発・蓄積した情報資源の学界での共有化を推進するために、高度連携システム(旧名称・研究資源共有化システム)を開発・運用しています。本システムは、本6機関と地域研究推進事業の諸拠点の100を超えるデータベース(令和2年3月現在、147データベース)と国立国会図書館NDL Search (同、11データベース)、京都大学東南アジア地域研究研究所のデータベース(同、16データベース)を横断検索する統合検索システム(nihuINT:nihuINTegratedRetrievalSystem)、年代・時代情報や地理的位置・地名情報の分析のための時空間解析システム(GT-Map/GT-Time)から構成されています。平成28年度末に更新したnihuINTは、時空間検索機能の強化、さまざまな目的別DBグループ設定の表示などによる高度化された検索環境、検索結果のSNS発信機能などのコミュニケーションツール、将来的なオープンデータ化を睨んだRDFデータへの変換機能などを備えています。GT-Map/GT-Timeでは平成22年9月から分析ツール「GT-Map/GT-Timeシステム」をフリーソフトウエアとして学界に提供しています。

 さらに、平成30年度には、第4期中期計画に向けた、高度連携システムの将来構想について検討を開始しました。
また、日本研究、日本における人間文化研究の国際的発信のために、平成26年3月に国際リンク集を公開しました。

 

事業概要

目標

 人間文化に関する学問の蓄積・継承・創成を目指す人間文化研究機構は、国内外で発信される種々のデータベースの有効利用による研究教育の促進を目指して、研究資源共有化推進事業を重点的に実施しています。この事業では、さまざまな研究データベースを、一元的に、網羅的に、かつ迅速に活用できる環境を創出することを目指します。
 これまで、当機構を構成する国立歴史民俗博物館、国文学研究資料館、国立国語研究所、国際日本文化研究センター、総合地球環境学研究所、国立民族学博物館は、それぞれの設置目的にしたがい、多くのデータベースを構築してきました。これらは作られた時期や仕組みも異なり、そのままでは一元的に利用できません。
 当事業では、まずこれらの多種多様な研究データベースを共通のプラットフォームに載せることにより、1つのキーワードで全てのデータベースをシームレスに検索できる環境を整備します。ついで、得られた情報のより高度な活用、例えば時空間情報に基づく分析を行うこと、あるいは個々の研究者の研究に適した情報やシステム環境の整備などを行います。
 また、これまでに6機関で作成したデータベースは200種に上りますが、そのすべてが公開されているわけではありません。まだまだ整備が必要です。加えて、新たに必要とされるデータベースも多くあります。これらの整備と開発と活用が不可欠です。

開発期

 研究資源共有化推進事業は、第一期中期目標期間(2004~2009年度)の第二年次の2005年(平成17年)度から3ヶ年計画で進められました。nihuINT(統合検索システム)は、2007年度(平成19年度)末に第一次システムが完成しました。また、研究者のための研究支援環境として、研究者参加型データベースシステムのnihuONEシステムを開発しました。さらに、人間文化研究の基礎情報となる時間、空間情報の解析処理を行うGTA:Geo-Temporal Analyzerの研究開発を進めました。

第一次システム

 2008年(平成20年)度から、諸システムの公開を開始しました。2008年6月に、新たに企画・連携・広報室(当時は企画室)の下に、事業推進を担当する研究資源共有化事業委員会を設置しました。
 データベース横断検索システム開発の成果として、2008年4月にnihuINTを、12月にnihuONEを公開しました。2010年(平成22年)10月に機構に参加した国立国語研究所のデータベースも、2011年度よりnihuINTに参加しました。また、機構が大学・研究機関と連携して推進しているイスラム地域・現代中国地域・現代インド地域にかかる地域研究推進事業(地域研究拠点)のデータベースも、nihuINTに参加することになりました。
 さらに、2010年10月より、時空間解析システム開発の成果としてGT-Map/GT-Timeのフリーソフトウエアを公開しました。時空間解析システム開発の一環として、地名辞書データの構築を進めました。
 社会・学界における人間文化研究資源情報の共有化の推進のために、2010年7月より、nihuINTと国立国会図書館デジタルアーカイブポータルPORTAとの双方向連携を開始し、国立国会図書館の横断検索システムの更新(NDL Search正式公開)に伴い2012年1月からnihuINTとNDL Searchとの双方向検索へと発展させました。

第二次システム

 2006年度末に導入したnihuINT及びnihuONEのシステムが耐用期限となったので、2011年度(平成23年度)にシステム更新を実施しました。nihuONEをnDP(nihu Data Provider)として新nihuINTのサブシステムとしました。また、新nihuINTでは、利用環境の高度化のために、検索結果分類・グループ化表示・サジェッション・異体字同定などの機能を実装しました。2012年12月現在、NDL Searchの12件のデータベースを含め、134のデータベースがnihuINTに参加しています。時空間解析システムでは、GT-Map/GT-Timeのフリーソフトウエアの高度化と地名辞書データの公開の準備を進めました。
 社会・学界連携の推進のために、2010年度より人間文化研究情報資源共有化研究会を、人間文化研究に関わる学術・文化機関や研究者に呼びかけて開催しています。さらに、社会・学界連携推進のために、2012年9月に委員会に人間文化研究情報資源共有化連携企画部会を設置し、学術文化機関関係者を専門委員に招き、研究資源情報の社会・学界での共有化の推進について検討を進めています。

第三次システム

 2016年度(平成28年度)からの第3期中期目標期間に入り、機構本部に情報部門と広報部門からなる「総合情報発信センター」が設置されました。「研究資源共有化推進事業」は同センター・情報部門の一事業と位置付けられ、その情報部門内に設置された高度連携情報技術委員会のもと、nihuINTも2016年度末にリプレイスを行ないました。
 このリプレイスにより、下記のような機能が追加されました。
(1) 目的志向型検索
大量で多様なデータから、よりユーザが望むデータに到達可能なように、対象とするデータベースを絞る機能をオプションとして追加しました。
(2) スマートデバイスへの対応
携帯型端末向けの検索機能を設け、軽快かつ迅速に横断検索を行なうことができるようにしました。また、検索結果をtwitterやfacebook等のSNSに送信できる機能も加えました。
(3) Linked Dataへの対応
柔軟な統合検索、他機関との容易な連携、データマイニングのための再利用性の確保という観点から、新たにLinked Dataによるデータベースの構築研究に着手しました。既存データのコンバートも含め、着々と公開に向けての準備を進めています。
 また、内閣府が主導し、国立国会図書館が運用する「国の分野横断ポータル」である「ジャパンサーチ」との連携を開始しました。「ジャパンサーチ」は2020年2月に一般向け試験公開をはじめており、nihuINTから40件のデータベースを提供中です(2020年2月現在)。さらなる連携拡大に向けて、提供データベースの追加を準備中です。

 今後も、nihuINT、GT-Map/GT-Timeの高度化はもとより、人間文化研究における研究教育環境の発展のために必要な情報と情報システム環境の一層の整備を進めます。さらに、この試みを国内外に拡げてゆくことを通じて、世界の人間文化研究の発展に貢献することを、目標としています。

 

2012年12月17日

人間文化研究機構 研究資源共有化事業委員会

2020年3月31日

人間文化研究機構 総合情報発信センター情報部門